
尾道市に根差した食文化の一つに、「せいろすし」があります。
この温かいお寿司は、瀬戸内海の豊かな恵みを象徴する郷土料理として、長きにわたり地元の人々に愛されてきました。しかし、その中心的な存在であった老舗の閉店は、現代の広島の食文化に一つの大きな変化をもたらしました。
この記事では、尾道せいろすしの魅力と、老舗が閉店した「今」、この伝統の味がどのように継承されているのかを追います。
尾道せいろすしとは? 独特の魅力と伝統
尾道せいろすしは、一般的な冷たいお寿司とは一線を画す、温かいお寿司です。
主に、漆塗りの枡形のせいろにご飯と具材を詰め、蒸して作られます。温めることで、具材とご飯がふっくらと一体となり、独特の風味と食感が生まれるのが特徴です。
- 主な具材の例:
- 刻んだ焼き穴子
- 椎茸の煮つけ
- 錦糸玉子
- 小エビのそぼろ
- かんぴょうを混ぜたすし飯
特に瀬戸内で獲れる肉厚で風味豊かな穴子は、尾道のせいろすしにとって欠かせない主役です。温かいままいただくスタイルは、寒い季節にはもちろん、一年を通じて尾道の食卓を温めてきました。
老舗「宮徳」の閉店と残された功績
尾道せいろすしの伝統を守り、全国にその名を広めてきたのが、創業天保3年(1832年)という長い歴史を持つ老舗「宮徳」でした。
宮徳のせいろすしは、代々受け継がれてきた秘伝の味と、江戸時代から使い込まれた漆塗りのせいろで蒸し上げるというスタイルが、訪れる人々に特別な体験を提供してきました。
しかし、2022年11月末、惜しまれつつも宮徳は暖簾を下ろしました。これは、「尾道最古のせいろすし」がその歴史に一旦幕を下ろすことを意味し、「現代の広島」の食文化において非常に大きな出来事でした。
現代の尾道で「せいろすし」の味をどう追うか?
老舗の閉店により、伝統の味を「お店でいただく」ことは叶わなくなりましたが、「せいろすし」という食文化そのものが消滅したわけではありません。
現代において、この味を体験し、記憶を繋ぐ方法は主に以下の2つが考えられます。
宅配・通販(冷凍)の行方
宮徳の閉店発表時には、一時的に冷凍の「せいろすし」の通販を受け付けていました。
これは、遠方の人や閉店を知って駆け付けられない人にとって、老舗の味を最後に味わう貴重な機会となりました。この冷凍販売は、伝統の味を現代の流通に乗せるという、一つの新しい試みでもありました。
今後、宮徳の味を受け継ぐ誰かが、冷凍という形で再び販売を始める可能性もゼロではありません。動向に注目し、地域内外のファンが味を求める声が、新たな継承を生むかもしれません。
尾道市内の他店の取り組み
「せいろすし」は尾道の地域色豊かな郷土料理です。そのため、他の和食店や寿司店が、独自の解釈やレシピで「せいろすし」や「温かいお寿司」を提供している場合があります。
これは、老舗が守ってきた伝統的なスタイルとは異なるかもしれませんが、尾道の豊かな海産物と食文化を活かした、「現代のせいろすし」として新しい魅力を放っています。
尾道観光の際には、地元の和食店を訪ねて、それぞれの店が作る「温かいお寿司」を探してみるのも、現代の広島の食の旅として大変興味深い体験になるでしょう。
まとめ 食文化の継承は「想い」から
老舗の閉店は寂しいニュースですが、尾道せいろすしが持つ歴史と美味しさの記憶は、多くの人々の心に残っています。
伝統の味が現代に継承されていく形は、店舗での提供だけでなく、冷凍による流通、他の店の新しい挑戦、そして家庭での再現など、多様化しています。
「現代の広島」の食文化は、過去の歴史を尊重しながらも、こうした新しい試みによって豊かに発展していくことでしょう。尾道を訪れた際は、ぜひ、温かいお寿司の歴史と現在に触れてみてください。


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