広島を代表する工芸品の一つ、宮島焼(みやじまやき)。別名「御砂焼(おすなやき)」とも呼ばれ、単なる器としてだけでなく、縁起物として古くから大切にされてきました。
この記事では、宮島焼が持つ独自の歴史と、世界遺産・厳島神社との深いつながり、そしてその器に込められた願いをご紹介します。
厳島神社との縁:宮島焼の始まりと「お砂返し」の風習
宮島焼のルーツは江戸時代にまで遡ります。この器が他の陶磁器と一線を画すのは、その名の由来にもなっている特別な製法にあります。
「御砂焼」と呼ばれる所以
宮島焼の粘土には、古くから厳島神社本殿の下にある**「御砂(おすな)」**が混ぜられています。この御砂を粘土に混ぜて焼き上げることから、宮島焼は「御砂焼」と呼ばれるようになりました。
- 特徴:
- 土に含まれる御砂の作用で、器の表面が素朴で温かみのある風合いになります。
- 派手さはありませんが、使い込むほどに手に馴染む、味わい深い器です。
縁起物としての価値を高めた「お砂返し」
江戸時代には、厳島神社に参拝した人々が、本殿の下にあるお砂を少し持ち帰り、代わりに自宅の庭の砂を「お返し」するという**「お砂返し」**の風習がありました。
宮島焼は、この**「神様の御利益がある」とされる御砂が使われていることから、旅の土産物や、人々に福をもたらす縁起物**として大変重宝されたのです。
| 御砂焼に込められた主な願い | 意味 |
| 無病息災 | 病気や災いから身を守ってくれる |
| 家内安全 | 家庭の平和と繁栄を願う |
| 開運招福 | 幸運を呼び込み、福をもたらす |
このように、宮島焼は単なる工芸品ではなく、神様と人とを結びつけ、日々の暮らしに安らぎと福を呼び込む特別な器として発展してきました。
受け継がれる伝統と、現代に息づく個性
伝統的な宮島焼は素朴さが魅力ですが、現代の窯元では、その歴史を大切にしながらも、現代のライフスタイルに合わせた新しい作品も生まれています。
宮島焼の伝統的な文様
宮島焼を代表する文様の一つに、広島名産の**「もみじ紋」**があります。
素朴な風合いの中に、もみじの可愛らしいデザインが施された器は、観光客からも愛され続けています。こうした文様にも、厳島神社の神域の自然を尊ぶ心が込められています。
平和への願いが込められた現代作品
広島の窯元の中には、現代の広島ならではのメッセージを込めた作品を生み出しているところもあります。
例えば、平和公園に寄せられた折り鶴の灰を釉薬(ゆうやく)の一部として使用した作品などです。これらは、宮島焼の**「縁起物」という側面に加えて、「平和の象徴」**としての意味合いを重ねる、非常に意義深い取り組みです。
宮島焼を「体験する」:神聖な器作りに挑戦
宮島焼の歴史やストーリーを知った後は、実際にその御砂を使った陶芸体験に挑戦してみるのはいかがでしょうか。宮島や宮島口周辺には、伝統を受け継ぎながら体験を提供している窯元があります。
体験で得られる特別な価値
陶芸体験で作る器は、単なる手作りのお土産ではなく、御砂が混ぜられた粘土を使って、ご自身の手で形にするという特別な体験の証となります。
- 無病息災を願う体験: 厳島神社との縁を感じながら作業することで、より思い出深い記念品になります。
- 作ってから届くまで: 成形後、窯元で焼成(約1〜2ヶ月)を経て自宅へ届けられるため、旅の記憶が再びよみがえります。
主な体験の種類と選び方
窯元や工房によって、提供される体験の種類や内容が異なります。ご自身の旅のスケジュールや目的に合わせて選びましょう。
- 手びねり体験: 粘土の塊から手で形を作る最も基本的な方法。所要時間が短く、初心者でも気軽にオリジナリティのある作品が作れます。
- 電動ろくろ体験: 陶芸家のように回転する台(ろくろ)を使って成形する方法。難易度は上がりますが、美しい曲線や本格的な形の器を作りたい方におすすめです。
- 絵付け体験: すでに焼き上がっている素焼きの器に、好きな模様や色を施す方法。短時間で完成し、お子様や時間のない観光客に人気です。
宮島焼の器を日常で楽しむ
宮島焼の器は、そのストーリーや背景を知ることで、より愛着を持って使うことができます。
ご自宅で宮島焼を楽しむ際のおすすめ
- お茶碗や湯呑み: 日々の食事の際に使うことで、毎日御利益を感じられると言われています。
- 酒器: 広島の地酒を宮島焼の酒器でいただくことで、旅の思い出や神社の縁を感じられます。
- 小物入れや花器: 置物としても、その素朴な風合いが和やかな空間を演出してくれます。
宮島焼は、使えば使うほどに風合いが増すため、ぜひ大切に使い続け、その変化を楽しんでみてください。


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